射出成形不良とは?外観不良の種類や原因、対策方法をわかりやすく解説

射出成形とは、自動車部品や家電、日用品など幅広い製品の部品製造に活用される樹脂成形加工です。しかし、射出成形は高い精度が求められる一方で、条件のわずかなずれによって外観不良や強度低下といった不良が発生しやすいという課題を抱えています。
本記事では、射出成形で起こりやすい不良の種類と原因、その対策方法をわかりやすく解説します。さらに、品質保証の要となる外観検査の重要性や、自動検査システムを活用した最新の解決策についても紹介します。
目次
樹脂成形加工とは

射出成形を理解するためには、まず基盤となる「樹脂成形加工」について知っておく必要があります。樹脂成形加工とは、プラスチックとなる樹脂を加熱し、溶融させた状態で金型に流し込み、冷却・固化させて成形する工程を指します。自動車部品や家電、日用品など、私たちの身の回りにある多くの製品は、この樹脂成形加工によって作られています。
その中でも最も広く用いられている加工手段が射出成形です。射出成形は、複雑な形状を持つ製品でも安定して大量生産できるため、製造コストを抑えつつ高精度な製品を提供できる点が大きなメリットです。
一方で、射出成形は非常に繊細なプロセスであり、温度や圧力、冷却条件といった要素がわずかにずれるだけで、さまざまな成形不良が発生するリスクがあります。そのため、射出成形による加工時には、品質管理のためにも正しい条件設定と不良対策が欠かせません。
射出成形で発生する外観不良
射出成形では、寸法のずれや強度低下など、数多くの不良が発生する可能性があります。その中でも特に注意すべきなのが「外観不良」です。
外観不良とは、製品の表面にキズやムラ、変形などが生じる状態を指します。見た目の品質低下だけでなく、場合によっては機能面の不具合にもつながるため、製品の信頼性やブランドイメージを大きく損なう要因となります。
こうした外観不良を防ぐためには、金型や材料、成形条件の管理を徹底するだけでなく、外観検査による早期発見と改善が重要な役割を果たします。
主な成形不良の種類と原因

外観不良を含め、射出成形ではさまざまな種類の不良が発生します。外観不良や強度に関わる不良は、製品の品質や信頼性を大きく損なう原因となるため、現象ごとの特徴と原因を理解しておくことが重要です。
ここでは、代表的な射出成形不良の種類と発生要因を解説します。
バリ
バリとは、金型の合わせ目から溶融樹脂がはみ出して薄い膜状に固まる現象です。金型が十分に閉じていない場合や、過剰な圧力がかかった場合に発生します。製品の美観を損ねるだけでなく、バリ取りの後工程が必要となり、コスト増加の要因となります。
ヤケ(焼け)
ヤケは、成形品の表面に焦げたような黒い筋や斑点が生じる不良です。高速で樹脂を注入した際に金型内の空気が圧縮されて高温となり、樹脂が焼けることが原因です。重度の場合には樹脂が炭化し、異臭を放つこともあります。
ボイド(空洞)
ボイドは、成形品内部に空洞や気泡ができる現象です。冷却不足や射出圧力不足、ガスの閉じ込めが原因で発生します。特に肉厚な成形品の内部で発生しやすく、強度を著しく低下させるため注意が必要です。
ソリ(反り)
ソリは、成形品が曲がったり歪んだりする不良です。冷却の不均一や肉厚差、残留応力が主な原因となります。寸法精度を求められる部品では致命的な不良につながります。
ヒケ
ヒケは、肉厚部分が冷却・固化する際に表面が凹む現象です。内部収縮や保圧不足、冷却不十分が原因です。外観不良の代表例であり、美観と機能の両面に悪影響を及ぼします。
クラック(割れ)
クラックとは、成形品の表面や内部にひびや亀裂が入る現象です。残留応力や取り出し時の衝撃、材料劣化などが原因で発生します。強度が重要な製品では致命的な不良となるため、外観検査などによる確認を徹底しましょう。
ショートショット
ショートショットは、金型に十分な溶融樹脂が充填されず、製品の一部が欠ける現象です。射出圧力や射出量が不足した場合に起こるため、成形条件や金型設計の見直しが求められます。
シルバーストリーク
シルバーストリークは、成形品の表面に銀色の筋や泡状の模様が現れる現象です。樹脂内の水分や揮発成分が蒸発し、水蒸気が混入することで発生します。乾燥不足や材料管理の不備が原因となります。
フローマーク
フローマークは、成形品の表面に溶融樹脂の流れ痕が波紋状に残る不良です。射出速度が一定でない場合や、樹脂の流動性が不安定な場合に発生します。光沢感のある製品では特に目立つ外観不良です。
ウェルドライン
ウェルドラインは、金型内で分かれた樹脂の流れが再合流する部分に細い線状の模様として現れる不良です。強度低下の要因にもなり、構造部品では大きな問題となります。
ドローリング(垂れ落ち)
ドローリングは、成形機の先端から漏れ出た樹脂が成形品の表面に残る現象です。射出速度や圧力不足が原因となり、次の成型時に十分な樹脂を射出できず「ショートショット」を引き起こす要因にもなります。
ジェッティング
ジェッティングは、樹脂が高速で金型内に流れ込み、蛇行した跡が製品表面に残る現象です。射出速度が速すぎると樹脂が線状のまま固化し、後から流れ込む樹脂と融合せずにジェッティングが発生します。
コールドスラグ
コールドスラグは、ノズル先端で冷えて固まった樹脂の塊が成形品に混入する不良です。ノズル温度が低い場合や金型との接触で発生します。ショートショットやフローマークを誘発する恐れもあります。
射出成形不良の対策

射出成形における不良は、その原因が単一ではなく、材料の状態、成形条件、金型設計など複数の要素が複雑に絡み合って発生することが少なくありません。そのため、不良の種類を正しく特定し、複数の側面からアプローチすることで根本的な解決を図る必要があります。
ここでは、代表的な対策方法を解説します。
成形条件の最適化
成形条件の最適化は、不良対策において最も基本かつ重要な取り組みです。不良の種類に応じて、以下の項目を調整することで外観不良の発生を未然に防げます。
- 射出圧力・保圧
- 射出速度
- 金型温度
- シリンダー温度
- 冷却時間
- 材料の乾燥
たとえば、ヒケやボイドには保圧や冷却時間の調整が有効であり、シルバーストリークには材料の乾燥が欠かせません。このように、不良の現象と原因を突き合わせて条件を最適化することが大切です。
金型設計の見直し
成形条件を調整しても不良が解決しない場合、金型自体に原因が潜んでいる可能性があります。樹脂の流動性や冷却の効率が適切でないと、ウェルドラインやソリ、フローマークなどの不良につながります。対策としては以下のような設計変更が挙げられます。
- ゲートやランナーの形状・位置の見直し
- ベント(空気抜き)の追加
- 冷却回路の最適化
金型設計の改善は初期投資が必要ですが、長期的には不良率の低減や生産効率向上につながります。
外観検査による不良確認
成形条件や金型設計を最適化しても、不良を完全にゼロにすることは困難です。そのため、射出成形品の外観検査により不良を早期に検出し、出荷前に不良品を排除することが欠かせません。
外観検査は、製品の信頼性を守る「最後の砦」であり、不良流出を防ぐための重要な工程です。目視検査に加え、自動外観検査システムを導入することで、より効率的かつ高精度な品質管理が可能になります。
射出成形の外観検査における課題と解決策

射出成形品の品質を保証するためには外観検査が不可欠ですが、従来の目視検査には課題が残ります。人の目に頼る方法では、検査員ごとに精度にばらつきが生じやすく、微細な外観不良を見逃すリスクも避けられません。特に大量生産を行う現場では、長時間の作業による検査精度の低下も問題となります。
これらの課題を解決する有効な手段として、自動外観検査機の導入が注目されています。カメラやセンサー、さらにはAI(人工知能)を活用することで、人の目では発見が難しい微細な傷やムラも高速かつ高精度に検出可能です。これにより、不良品の流出を防ぐとともに、検査工程の効率化を実現できます。
また、自動外観検査を導入すれば、熟練検査員に依存せずとも安定した検査体制を構築できるため、人手不足の現場や品質管理を強化したい現場において有効な解決策となります。
射出成形の外観検査を導入される方へ
射出成形における外観検査は、品質保証の要でありながら、人手不足や検査精度のばらつきといった課題を抱える現場が少なくありません。そのため、自動化や標準化を進める企業が増えています。しかし、自社だけで最適な仕組みを整えるのは簡単ではなく、専門的な知見や経験が必要です。
SAIASでは、製造現場の状況や課題に合わせて外観検査の導入・改善をサポートするコンサルティングサービスを提供しています。カメラやAIを活用した検査体制の構築から、既存ラインへの最適な導入方法まで、専門家の立場から伴走支援いたします。
射出成形の外観検査を本格的に導入・改善したいとお考えの方は、ぜひSAIASのコンサルティングサービスをご覧ください。

