目視による外観検査で起こる見逃しを防止するには?
有効な対策をご紹介
製造業において、外観検査は製品の品質を担保するために欠かせない工程です。
目視による外観検査の場合、ルーペや顕微鏡などを用意するだけで対応できるため、特別な検査機器や設備は必要ありません。設備コストを抑えられる一方、検査員の人的ミスや環境要因などにより見逃しが発生しやすいという課題を抱えています。
本記事では、目視による外観検査で見逃しが発生する原因を明らかにした上で、具体的な防止策についてご紹介します。自動検査装置やAIによる自動化技術を活用した最新の解決策も取り上げているため、目視による外観検査で悩んでいる企業様はぜひ参考にしてください。
目視による外観検査とは
工場や製造現場では、製品の品質維持・向上のために外観検査の工程が欠かせません。人の目で製品を一つずつチェックする目視検査は特別な検査機器や設備が不要なため、十分な人手さえ確保できれば比較的容易に実施できることから、従来は主流のやり方でした。
しかし、人手不足が深刻化する現在では検査員の確保が難しく、加えて目視検査ではヒューマンエラーや検査品質のバラつき、生産性の向上が難しいといったさまざまな課題があることも事実です。
経済産業省では、このような製造現場の課題を解決するために「AI導入ガイドブック」を発行し、外観検査の現場へのAI導入を推奨しています。
目視による外観検査で不良の見逃しが起こる主な原因
目視による外観検査では、さまざまな要因によって不良の見落としが発生します。主な原因は以下のとおりです。
1.作業者の集中力・疲労の影響などによるヒューマンエラー
目視検査は繊細な作業であり、作業品質は検査員の集中力や体調に大きく左右されます。長時間にわたって検査を続けていると、同じ作業の繰り返しによって注意力が低下し、小さな不良を見逃すリスクが高まります。
また、検査員の疲労が蓄積すると、不良品と正常品の違いを識別しづらくなり見落とすこともあるでしょう。
2.検査環境による影響
外観検査の精度は、検査環境にも大きく影響します。たとえば、照明の角度が不適切だったり、明るさが不足していたりすると、細かいキズや異常を見逃しやすくなります。
また、検査場の温度や湿度が快適な状態に保たれていないと、作業者の集中力が低下し、検査精度に影響を及ぼすこともあります。検査ミスや異常の見逃しを抑えるためには、作業環境の適正化を図ることが不可欠といえます。
3.不良の多様性と判断の難しさ
外観不良には、キズや変形、変色、異物混入などさまざまなパターンがあり、検査員がそれぞれの基準を正しく理解していないと判定のバラつきが発生し、見逃しのリスクが高まります。
また、キズや変形などが微細であるほど正常品との判別が難しくなり、見逃しが発生する可能性が高くなります。
4.作業者のスキルや経験の差
目視による外観検査の精度は、検査員の経験やスキルに依存しがちです。熟練者は微細な不良を見つけやすい一方で、経験の浅い検査員は不良を見逃してしまう可能性があります。
また、経験を積んだ熟練の検査員であっても、過去の経験や先入観によって「この製品にはこのような不良は発生しにくい」と思い込んでしまい、検査精度が低下するケースもあるでしょう。
5.検査スピードや心理的プレッシャーによる影響
現場では大量の製品を製造するため、検査員はラインを止めないようスピーディーに検査を行う必要があります。
しかし、生産効率を優先するあまり、じっくり確認する時間を取れず小さな不良を見逃してしまうケースも想定されます。
また、外観検査は製品のクオリティに直結するため、検査員には「見逃してはいけない」という心理的プレッシャーがかかり、冷静な判断が難しくなる場面もあるでしょう。
目視による外観検査で見逃しを防ぐための対策
目視による外観検査で不良を見逃さないために実施したい有効な対策を6つ紹介します。
1.検査員の集中力・疲労軽減対策
外観検査の正確性を維持するためには、検査員が集中して業務に取り組める労働条件を整備することが重要です。
例えば、定期的に休息やストレッチをする時間を確保することで疲労軽減につながります。
また、交代制の導入や作業時間の調整により、長時間の作業による注意力の低下を防ぐことが可能です。
2.検査環境の最適化
検査場の照明は適切な明るさを確保するとともに、作業の妨げにならないよう角度も細かく調整し視認性を向上させましょう。
また、検査員の疲労軽減や集中力維持のためにも、検査場の温度・湿度は適切に管理し作業環境を整えることも重要です。
さらに、意外と見落としがちなのが検査スペースの作業台などの配置です。長時間にわたって無理な姿勢を続けていると体への負担が大きく集中力の低下を招くこともあるため、作業台の高さや幅、配置場所も工夫してみましょう。
3.明確な基準と判断の標準化
不良の基準が曖昧にならないよう、判定基準をマニュアル化したり、チェックリストを作成したりしましょう。
また、過去の不良事例をデータベース化し、検査員がいつでも参照できるようにしておけば、判定に迷うことも少なくなるはずです。
不良事例を物理的な「見本品」として保存しておき、検査員が現物を見ながら直接比較できるようにすることも有効なやり方です。
4.検査員のスキル向上と教育
新入社員や経験の浅い検査員に対しては、初めは熟練者とのペア検査を行い、OJTを通してスキルアップを図ります。
同時に定期的なテストや研修を実施し、検査スキルの修得状況を可視化し精度向上を目指しましょう。
5.検査スピードと作業負荷の適正化
検査の作業に慣れてきたら、スピードと正確性を両立するための品質管理にも取り組んでいきます。
たとえば「1時間でX個の検査を行い、見逃し(ミス)はY個以下に抑える」といった具体的な数値目標を掲げます。検査員のスキルに合わせて数値目標は柔軟に設定しましょう。
ただし、あくまでも適切な作業ペースを前提とし、検査の品質を維持するためにも過度なスピード重視は避けるべきです。
また、万が一検査員が誤った判断をしたり、見逃しが発生したとしてもミスを責めるのではなく、検査プロセスの中で改善すべき点がないかを検討し、検査員に過剰なプレッシャーがかからないようにすることも大切なポイントです。
6.自動検査装置やAI検査を導入
目視による外観検査は人の作業である以上、検査スピードには限界があり、ミスや見逃しを完全に防ぐことはできません。
人手不足が深刻化する製造業界では、自動検査装置やAIを活用し不良品を高精度で検出する仕組みが注目されています。
自動検査装置は一定の基準で迅速・安定的な検査を実施できるほか、機械学習技術を用いたAI検査では、膨大な検査画像を学習データとして取り込むことでさまざまなパターンに応じた高精度な検出を実現します。
SAIASでは検査の見逃しを防ぐために外観検査システム構築サービスを提供
外観検査の自動化にはAIをはじめとした高度な技術・ノウハウが必要です。
外観検査の自動化を検討している企業様は、お気軽にSAIASへご相談ください。SAIASでは現場の状況や課題に合わせて、最適な外観検査システム構築のご提案をさせていただきます。
目視検査の負担を軽減するためにAIを搭載した自動検査装置を開発し、機械学習によって不良品検出の精度向上に成功した事例が数多くあります。
また、すでに運用している検査システムを改良し、環境に適応した設定調整や運用後の最適化まで徹底的にサポートもさせていただきます。
外観検査の自動化に取り組んでみたものの、思うような成果が上がらなかったという企業様は、ぜひSAIASへご相談ください。
目視による外観検査での見逃しを防ぐために自動化を検討してみよう
製造業界は深刻な人手不足に陥っており、これまで主流となっていた目視による外観検査では、生産体制を維持できなくなる可能性があります。また、生産性向上の問題や疲労などによるヒューマンエラーなど、さまざまな課題もあります。
SAIASでは、製造現場が抱える課題を解決するために外観検査システム構築サービスを提供しています。
人手不足にお悩みの企業様はもちろん、外観検査の精度を高めたいとお考えの企業様はぜひお気軽にSAIASにご相談ください。